Hello,EQ!

研修講師 柴田やすふみが日々感じたことを自由に綴るブログです。

母と

10代の頃、CHAGE and ASKAの曲を聴く僕のことを

母は怪訝な表情で見つめていた。

大学受験を間近に控えながら、いつまでも本気で

勉強しそうにない僕を見てイライラしていた。

 

僕の青春は、まさにCHAGE and ASKAと共にあったと

言っても過言ではないだろう。

 

僕が社会人になり落ち着いたころから、

母は僕以上にASKAさんの大ファンになった。

 

せめてもの親孝行をと思い母をASKAさんの

ライブに連れ出したことがあった。

 

あれは確か、My game is ASKAの札幌公演。

曲が進むごとに少女のようにキャッキャッと笑顔か弾む。

「あ!今、ASKAさんと目が合った!合った!

こっち見てる!絶対見てるー!」

そんな傍らの母を見ながら、普段の公演とは違う楽しみがあった。

今、母はあの日よりも耳が遠くなった。

僕や兄が話す言葉の半分も聞き取れないことがある。

そんな母が突然切り出した。

「そういえば、ASKAさんの新しい曲はどんなの?」

「うん?あー、これこれ。」

聴かせたのは、虹の花、という曲。

 

「いいわー。でももう年だから、もっとゆったりとした曲がいいな。」

「お!じゃ、これはどう?」

僕が次に聴かせたのが「一度きりの笑顔」だった。

静かなピアノの旋律から始まるその曲は、

母と末っ子の時間を優しく包み込んだ。

アルバムが出てから何度も聴いたはずなのに、なぜだ?

不思議と涙が溢れてくるのだ。

それは母も一緒だった。

悲しいから?

寂しいから?

切ないから?

 

いや、違う。そんな単純な感情ではなかった。

そこには優しさと温もりが確実にあった。幸せなのだ、きっと。

母とあとどのくらいこんな幸せな時間を過ごせるのかはわからない。

でも、ASKAさんの歌がある限り、何が起こってもまた幸せになれる。

そんな希望の時間だった。